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2016年1月21日 (木)

東日本大震災の影響は続く ~ 先日出逢った一冊の本より ~

今年最後のメールマガジンとなります。今年も色々な事がありましたが、振り返ると目の前の問題にばかりに気を取られていたような気もします。しかし、私達の見えない場所でも様々な事が起きています。今回はその事を取り上げて、今年最後のしめくくりとしたいと思います。

普段多くの生き物に囲まれて有機農業を行っていると、小さなバクテリアから人間のような大きな生き物まで、みんな命が宿っていて、限られた環境、限られた寿命、そしてそれぞれの運命の中で精一杯生きていると感じる。ふと考えると、私達農家はいったい一年間で幾つの命を奪っているのかと思う時もある。しかしただ一つ言えるのは、私達三芳の農家は「農薬」という卑怯な手段は使わず、一匹一匹の虫と向き合い戦っているという事。それも自分の田畑に侵入してきた虫に対してだけであり、決して無駄な殺生は行っていないと思います。農薬が開発されるまでは、あたりまえのようにそういう農業が行なわれ、全ての生き物たちが、他の生物のテリトリー(領域)を大きく脅かす事なく仲良く暮らしてきました。また私達が飼っている鶏たちをはじめ、牛や豚などの家畜たちも人間の食物のために犠牲になるとはいえ、それまでの間は農家がたくさんの愛情をそそいでくれていると思います。

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先日、知り合いから一冊の本をいただきました。それは福島第一原発から20km圏内に取り残された動物たちに関する写真集です。タイトルは「のこされた動物たち」。太田康介さんという報道カメラマンが3か月間かけて撮影した記録です。写真と文章が半々くらいでしょうか。最近は滅多に報道されなくなった被災地の状況。もうこの本が発行されてから4年が経ちますので、写真に写っている動物達のほとんどは死んでしまっていると思います。震災後に特別に設置された政府の「復興予算」も、全く関係のない事業に使われたり、現在では無理やり「東京オリンピック関係」という項目にすれば予算がおりてしまうような体質のこの国。被災地の人間以外のちっぽけな(本当は決してちっぽけではないが)生き物になんて目を向けるお役人さんなどいないと思います。というか、仮設住宅の他、まだまだ様々な問題があるでしょうから、実際にはそれどころではないというのが現実だと思います。

しかし、ちゃんとこういう記録を撮ってくれている人がいます。そしてこの本によって、様々なボランティアの方々がこの動物たちの命を救うために頑張っている事を知りました。もちろん、他のボランティアと違い、全く公的な援助もなく活動を行っています。このカメラマンも書いていました。自分ができる事は写真を撮って多くの方に見てもらう事だけだと…(涙)。私も2年前に2日間だけ被災地の農家をお手伝いしただけで、その後の呼びかけにも応えられていません。しかし今回、私の元にこの本が届いたのにはきっと理由があるはず。この本と出会った奇跡を少しでも活かして、この震災を風化させないよう、今回はその内容を少し紹介させていただきたいと思います。

本の内容より

 [きてくれた]車のほとんど通らない交差点に一匹の犬がいました。私に気付くと、彼は自ら近づいてきました。持参したドッグフードを差し出すと、食べはしますが、それよりもスキンシップを求めてくるのです。食べ物より人間の方がいいのです。耳をペタンと寝かせて「なでで、なでで」と目で訴えてくるのです。きっとこの前までどこかの家族の一員だったのでしょう。食事を終えても私のそばから離れず。私は胸がつまって、ただ「ごめんよ、ごめんよ」と謝るしかありませんでした。

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 [人間のつごう]犬や猫だけでなく、他の動物が気になって家畜舎を訪ねました。死体が積み重なる中でなんとか生き残っている豚がいました。意味もなく見捨てられて豚たち。しかし彼らと寄り添うように静かに眠っていました。また先に逝ってしまった仲間たちを気遣うような仕草を見せながらやっと立っている馬たち。私に対して「どうして?」と目で訴えているような気がしました。その後政府より家畜は全て全頭処分(安楽死)するという発表がありました。死に方で一番苦しいとされる餓死。せめて皆が無事に安楽死した事を願うしかありませんでした。

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 [人の消えた街で]庭につながれたまま息絶えている犬がいました。どうしようもない現実。そっとタオルをかけ、花を添え、体をポンポンとたたきながら「天国でいっぱい走るんだよ」と言いました。その犬は、楽しかった時の思い出を胸に、天国へいったのだと思いたいです。

 その他、「水欲しさに水路に落ちて動けない牛」「自宅の烏骨鶏を血だらけになって野犬たちから守りぬき弱ってしまい、死を待つ犬」「鶏とエサを仲良く分け合って食べている犬」「餌がなく空腹に耐えきれずビニールを食べている馬」など

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 ~④それぞれに写真がありましたが、あまりにかわいそうでしたので、その中でもお見せできると思われた写真だけを添付しました。

数か月前から、一部の原子力発電所が動き出しています。もうこのような災害が起きないと誰が断言できるのでしょうか。今も震災は続いています…。興味がある方は是非書店に行ってみてください。

生産者番号 56番 八代弘樹

 


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コメント

 素敵な本を紹介して下さって、有難うございます。メルマガ、いつも楽しく拝読しています。三芳のお野菜の様子が感じられて、かつ考えさせられる内容のものも多く、どんなに忙しくても三芳のメルマガだけは、目を通してきました。

 利用する駅の近くで、かなり頻繁に被災地の動物たちへの支援を呼びかけている方々がいらっしゃいます。わんちゃん達を連れて活動していらっしゃるのですが、時間を見て、合間合間にお散歩をしてあげていたりして、感心することしきりです。最近、寒いからでしょうか、あまり見かけなくなってきて。こう寒くては、一箇所に留まって活動するのも動物にも負担が大きいのだろうな…。自分は何も出来ていないにも関わらず、彼らが元気にやっていってくれることを、駅前を通る度に願っています。

 どんな小さな動物でも、与えられた場所で、一生懸命生きている。そんな当たり前に気付いたのはいつでしょう。そんな事さえ置き去りにしなければいけないような、慌ただしい一日が、今日も始まります。

 あの日、私たちが失ったもの、得たもの、気付かされたもの。風化していく記憶、それでも3.11を私たちは忘れない。

投稿: 萩原 祐美子 | 2016年1月22日 (金) 07時08分

「拝読」って…なんか照れますね。
田舎にいますと、そういう募金活動などの方々にはあまり会いませんが、都会では多いのでしょうね。
特に今回のような動物愛護系のなんて、一般の方はなかなか身近に感じられないと思います。
はずかしい話ですが、私も街頭での募金活動に協力(募金)するようになったのもメールマガジンを書きはじめてからです。
また、ひとりひとりが出来る事なんて限られていると思いますが「その悲惨な出来事を忘れない」という事だけでもいいのではないかと思います。
先日起きたバス転落事故も、昔起きた旅客機墜落も、東日本と阪神淡路の震災も、多くのテロも戦争の悲惨さも誰かしらが覚えている事で少しは救われるのではないかと思います。
一般の農家が行っている農薬散布も、小さな虫たちにとっては災害のようなものです。今回の本の筆者のように、私たちのような農家が今後もその怖さを発信するかないと思います。

投稿: 八代弘樹(56番) | 2016年1月23日 (土) 11時05分

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