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2016年5月28日 (土)

世界一貧しい大統領(前ウルグアイ大統領のムヒカ氏)の来日にあたり

ムヒカ氏とは、皆さん御存知のように国連で行われた「持続可能な開発社会」の会議で伝説的スピーチを行い、全世界にその存在感を示した人物である。そしてまた最近、来日もされましたね。大統領といえば言わずと知れたその国のトップ。自分の一言で国を動かし、ちょっと欲を出せば多少の富を築く事くらいできそうなもの。しかしそんな立場であるにもかかわらず、欲は無く庶民と同じ暮らしをしている。そしてそんな人を大統領に据える国があったなんて私には信じられなかった。

初めてムヒカ氏の演説を耳にした時、私は時々テレビで取り上げられる世界の秘境に住む民族の人たちの顔を思い出した。その民族は私達の生活と比べ、考えられないほど不便な生活をしている。しかしムヒカ氏の何とも言えない優しい笑顔も魅力だが、その秘境の民族もなんという幸せそうな顔をしているのだろうといつも思う。ムヒカ氏の「人生はゼンマイ仕掛けの時計のよう。人生の時間は買えない。人生の貴重な時間をなんのために使い、そして幸せを感じる事ができるかが大切」という言葉を思い出した。同一民族で独自の文化を守りながら生きているその秘境の人々。もちろん医療面でも草木を煎じて漢方薬のように使用する程度で平均寿命も短い。そして信仰心を大切にし、何か問題が発生すると神に祈りを捧げるくらい。しかしそれでもなぜか楽しそうである。以前にテレビでそういう民族の家族を文明社会へ連れてきて現代の便利な生活を体験させるという特番を目にした事があるが、今考えるとそんな事を教える事には全く意味がないのではないかと思う。むしろ逆にその民族にとってはマイナス要因以外のなにものでもないという気持ちになる。世界各国の「幸福度ランキング」で53位の日本。もちろんムヒカ氏が大統領を務めたウルグアイよりはるかに下である。その結果を見ると、秘境の民族の方が日本国民より絶対幸せな気持ちで暮らしているに違いない。また、テレビ局の都合で勝手にひきずりまわされ、今現在もその民族が幸せに暮らしているのかが心配になってきた。しかしそういう番組がずっと続いているのも、私達日本国民が自分達の文化レベルを自慢したいという気持ちを持っているからだろう。人類はこの数世紀の間、様々な便利な道具を作り出し急激に発展してきた。しかしその反面、ムヒカ氏が言うように、限りある地球の資源を浪費し続け地球に借金をし、地球の寿命も縮めてきた事も確かだ。

世界で第3位の経済大国である日本。しかし国民の16%が今一番欲しいのは「お金」であるという調査結果が出ている。「人間は豊かさを知ると、それを失う事に対する恐怖心を抱くようになる。だから、お金を稼ぐ事以外に何か生きがいを見つけなければ人生を楽しむ事はできない」というムヒカ氏の言葉…本当にその通りだと思う。農家だって生活がある。しかし、私達三芳の生産者が一般の農家と違うのは「顔の見える関係、そして心の触れ合える関係」があるという事。ムヒカ氏も「政治家にとって一番大切な事は人から慕われる事」と言っている。では私達生産者はどうするべきなのか。以前に質の悪い野菜が出荷されそうになった時に三芳の内部で「この品物はその代金を支払って購入するだけの価値があるのか」という話になった事があったが「そういう対価という考え方をしていては野菜のレベルはその位置に留まってしまう。そうではなく「相手を感動させたり、笑顔にできるものを目指していかなければならない」と思う。しかし時には失敗もあるし、勘違い等もある。もしもその事で相手に迷惑をかけてしまったら許してくれるまで心からわびればいい。きっとわかってくれるはず。しかし「食べる会の方が心躍らせるような野菜!」私にも作れるだろうか(冷汗)。しかし生産現場の様子を伝え、野菜たちが生まれて(芽を出し)成長し、立派になるまでの成長の記録を考えながら食べていただくだけでも、野菜の味は変わってくると思います。

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人間、歳を重ねてくると何が一番大切なのかという価値観が変わってくる。若い頃は「自分を誰かに認めさせたい」という気持ち。そして家族や子供を持つと「家族にひもじい思いをさせたくない」という気持ちになる。ムヒカ氏にとっての家族とは何なのか。最愛の奥さんはもちろんだが、ウルグアイの国民、そして全世界の国民に対しても「みんなが幸せな世の中に!」という強い想いが伝わってきた。「貧困格差を無くしたい」自らも大統領の給料の9割を慈善事業に寄付し、資産も中古の古い外車1台のみ。国務で海外に出かける時も飛行機はエコノミークラス。ムヒカ氏は、確かにお金は無いかもしれない。しかし全国民との信頼関係、そして今では世界中からの大絶賛の声…。本当にこんなに幸せな人はいないと感じた。きっとムヒカ氏は既にお金では買えない本当に価値のあるものを手に入れていると思う。

また、ムヒカ氏の話を聞いて思い出した人がいる。それは私たちと同じ有機農業をされている星寛治さん。少し前に星さんの講演会の音声を手に入れる事が出来、ポータブル再生機で聞きながら農作業をしている。もう10回以上は聞いただろうか。星さんは私たち三芳村生産グループとほぼ同時期に山形県高畠町で有機農業を始め、しっかりとした農業哲学論を持ち「自然との共有」「食の安全」を目指し消費者との交流を大切にしながら地道に有機農業に取り組んでこられた。「贅沢はいらない。しかし手間暇をかけて作った農作物をそれ相応の評価をもらって、生計が成り立つ世の中であってほしい」とおっしゃっていました。また作家、詩人としての顔を持ち、全国各地での公演、そして星さんを主人公にしたドキュメンタリー映画「いのち耕す人々」も製作されている。もちろん今まで公私ともに色々とお世話になり、ご本人にもお会いした事もあるが、ゆったりと構えたその雰囲気もすばらしいし、またヘッドフォンから流れる声を聞いていると本当に癒されます。

三芳にもお手本となる先輩方はいますが、これからも色々な方との一期一会を大切にしていきたいと思います。まだまだこの世は捨てたものではない。ムヒカ氏が願うように、世界の人々が皆笑顔になれる社会が実現するようになればいいし、技術もそういう方向に進歩していって欲しいと思います。

生産者番号 56番 八代弘樹


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コメント

 人生50年。いや今はもう70、80…年の時代ですね。それでも、50年近く、あっという間に過ぎてしまった気がします。

 ♪幸せって何だっけ何だっけ♪全ては心ひとつなのでしょうね。

投稿: 萩原 祐美子 | 2016年6月 6日 (月) 18時21分

ほとんどの人は地位や名誉を得ると、性格が変わってしまうと思います。特に日本人は働き虫ですので、何かしら自分で仕事を作りたがるもの。
ムヒカさんは多分、最愛の奥様に巡り合えたから、他には何もいらなくなったのかもしれませんね。
メールマガジンには詳しく書きませんでしたが、実はムヒカさんの奥様は裕福な家に産まれながら、貧富の差を無くそうと家を飛び出した人なのです。二人して本当にすごい方です。

投稿: 八代弘樹(56番) | 2016年6月 9日 (木) 19時36分

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